K-1 MAX初代王者クラウスはなぜブレイキングダウンで負けたのか? 西谷大成が起こした大番狂せを読み解く
これが時代の流れなのか。ある年代以上の人間にとっては、残酷とも思える光景だった。
8月26日に開催された『BreakingDown9』。話題の“1分間格闘技”は大会ごとに規模を拡大し、今回はK-1のレジェンドファイターたちが参戦を果たした。
ただし結果は振るわなかった。勝ったのはメインイベントに登場したジェロム・レ・バンナのみ。ボブ・サップとアルバート・クラウスは判定負けを喫した。彼らとは別にエントリーしたTATSUJI(K-1 WORLD MAXで活躍)も敗れている。
とりわけ衝撃が大きかったのは、クラウスの敗戦だ。中量級大会であるK-1 WORLD MAXの第1回世界トーナメント覇者。その準決勝では魔裟斗にも勝っている。そんな選手が、プロアマ混在、不良たちの乱闘がクローズアップされることも多い大会に出場したのだ。オーディションに姿を現したクラウスを見て、CEOの朝倉未来は思わず「なんでここにいるんだろう」。それだけの大物なのだ。
しかし、結果としてクラウスは敗れた。しかもダウンを奪われて。勝ったのは西谷大成。すでにプロで活動している選手だが、実績や知名度では大きな差がある。そもそも彼の“本職”はMMAだ。ただ西谷が有利だったのは、ブレイキングダウンでの闘いに慣れていたこと。
クラウスは試合前日の記者会見で「ファイトはファイトだ。10分でも1分でも違いはないよ」と語っていた。また「日本で試合をするのが好きなんだ。オファーがあったらもちろん出るよ」とも。つまりクラウスにとって、この試合はこれまでやってきた試合と変わらないものだった。
だが実際には、朝倉未来も言うようにブレイキングダウンと他の格闘技は「本来は別競技」だ。1分という短期決戦で力を爆発させることに関しては、西谷に一日の長があった。ダウンを奪ったパンチも、クラウスの動きをよく見ていたからこそ当たったもの。ラッキーパンチではないだろう。
「やっぱ歳には勝てませんよ」
クラウスの実力を称えつつ、試合後の西谷は言った。ルールへの対応だけでなく、若さや勢いという点でも自分が有利だったというわけだ。
クラウスは43歳、K-1 MAXで優勝したのは21年前のことだ。対する西谷は26歳。選手育成企画「朝倉未来1年チャレンジ」の1期生で、ブレイキングダウンはいわば“御前試合”だ。誰が相手でも負けるわけにはいかない。クラウスのことは「最高の踏み台」と表現していた。
しかもこの試合は、再起をかけたものでもあった。6月のRIZINに出場したものの、鈴木博昭にKO負け。飛びヒザ蹴りにカウンターのパンチを合わされた。それを踏まえて、クラウス戦に向けて「派手に飛びヒザで倒します」というコメントも。
西谷にとって、今回の試合はクラウスに勝つことだけが目的ではなかったのだ。鈴木戦での「ミス」を払拭することも意識していた。実際、西谷はクラウス戦で飛びヒザを繰り出している。
こうして振り返ってみると、この試合の“主語”は西谷だったように思える。「クラウスが負けた」というより「西谷が勝った」試合。闘いのドラマ、ストーリーは西谷のものだった。言ってみれば、2023年にブレイキングダウンという舞台において出るべくして出た結果。西谷にとって大事なのは、この試合で得た自信をMMAの試合につなげることだ。次戦決定を楽しみに待ちたい。
文/橋本宗洋
https://news.yahoo.co.jp/articles/456c7f660878d32af7db9e5e2b3efea2d09a1314
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