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ダルビッシュ翔「アウトサイダーに乗り込み逮捕。サップ西成に真実を聞いてみた」

『Breaking Down』や『RIZIN』など、格闘技の人気が高まる中で未だに真相が明らかになっていない格闘技界の事件がある。それが2013年9月、総合格闘技『THE OUTSIDER』の大会中に起きたプロモーターの“前田日明襲撃事件”だ。大阪開催の興行を巡って地元の格闘技大会の関係者が前田氏を襲撃、逮捕者まで出た一件である。その大会の運営会社代表だったサップ西成(46)が、10年の沈黙を破って初めて前田氏を襲った事件の真相を語った。

 * * *  今から遡ること約10年前の2013年9月8日。東京の総合格闘技『THE OUTSIDER』が初めて大阪で開催するとあって『THE OUTSIDER 第27戦』の会場は満員の賑わいを見せた。当時、この大会に出場した選手は、今の『Breaking Down』などで活躍するメンツが勢揃いする。朝倉海や啓之助、金太郎、それにダーク翔というリング名で、ダルビッシュ翔も出場した。  事件は9試合目が終わった直後に起きた。会場の入り口付近にいた男たちが雪崩れ込んで会場は紛糾する。リング上で勝者を讃えていた前田日明氏に、怒号を交えながらサップ西成など複数の男らが駆け寄り、セキュリティに止められながらも「前田来い、コラッ」と詰め寄ったのだ。前田氏は関係者に抱えられて控室に籠城するも、その控室でもひと悶着あったとされる。  翌年1月には威力業務妨害容疑などで大阪府警がサップ西成を含めた5人を逮捕。「大阪開催に挨拶がなかった」と襲撃の動機がまことしやかに語られるが、真相は今も藪の中だ。  この騒動で逮捕されて以降、サップ西成は格闘技から距離を置き、メディア取材もすべて断り続けてきた。そのサップ西成が初めて口を開いた。 「あの事件で傷害など、再逮捕を3回されたんです。俺はサップやから喧嘩も強いって初めは思ってたんやけど、人に迷惑をかけたとホンマに反省したんです。6か月ぐらいの拘留でも、罪を犯せば塀の外にいる人たちに迷惑をかけてしまう。自分だけの責任で済まない立場になった。若い子が集まるような繁華街にも行かなくなって、今は自分から喧嘩をするとかないですね。逮捕後、飲食店を2、3軒してたんですけど、どうしてもお客さんが“僕ら関係の人”が集まってくる。それでは駄目だと思って、それからですね。サップ西成を隠して商売し始めたのは……」(サップ西成、以下同)  現在、北新地の居酒屋「福」など2店舗の飲食店を経営する傍ら、総合格闘技で習得したスキルを若い選手らに、「無償で教えに行っている」という。今年2月には久々に格闘技大会にも出場してヒロ三河に判定勝ちした。  サップ西成の原点は、やはり格闘技にある。格闘技で再び狼煙を上げるため、噂やデマが広まった前田日明襲撃事件を吐露する胸中に至ったという。

■襲撃事件のきっかけになった「パーティでのトラブル」

「あの事件の2、3年前です。実は前田さんとは東京のタレントなど著名人が集まるパーティでお会いしてるんですよ。そこに前田さんがいたので僕からしたらチャンスだと思った。もちろん目上の方だと分かっているんで、僕は『西で格闘技イベントの代表をしているサップ西成です』と名刺を切ったんです。『アウトサイダーさんと対抗戦とかできたら面白いと思います』と話すと、いきなり『話があるならマネージャーを通せ』と座りながら言われて、めちゃくちゃ偉そうやったんです。それを横で聞いていた友人が、仕事上のトラブルで前田さんと揉めていて。それで友人が、『お前、誰にいうとるんじゃ』と前田さんと言い合いになったんです」  サップ西成はその格闘技大会の看板選手で、それ以前は地下格闘技『喧王』のチャンピオンでもある。『喧王』とは、2005年に日本で初めて誕生した地下格闘技イベントで、その3年後に『THE OUTSIDER』は産声を挙げた。  世間では2010年以降、関東連合が絡んだ事件が続発。その組織を模倣したとされる関西連合なる半グレが、大阪はミナミを拠点に暴れ回っていると広まったのは2012年前後のこと。「組織の大半は格闘技大会に出場した選手らで、恐喝などを繰り返している」とも在阪のメディアは報じていた。 「僕らが関西連合を作るとか、逆にそれ誰が言うたん、みたいな感覚です。名乗ったこともないんです。それに僕らの大会は団体ではなく、所属選手もバラバラ。警察が勝手に団体と括って、反社会勢力の認定をするとの噂も聞いてました。そんな中でうちの幹部が一般市民に暴行で逮捕されたと報道されましたが、幹部なんかおらんのです。うちの代表は僕で、女性社員を含めて4人です。当時、変な誤解があったらアカンから、関西のテレビ局や一般紙の取材をすべて受けたんです。1時間ずつ時間を割いて丁寧に説明したけど、取材終えて雑談してる時に、タバコ吸うじゃないですか。それを映像で使用されてしまった。確かに道端で喧嘩もしたこともある。だから、全部報道してくれと言ったんです。良いこともやってるんやし、それが何かすべて悪いような感じで言われて」  大阪の歓楽街ではその当時、彼らが恐れられていたのも事実である。関東連合のように部外者が勝手に「関西連合」の関係者を名乗って、ムーブメントになっていた。“半グレ”なる俗称が生まれたのもこの時代だ。 「下部の大会も含めると、出場した選手だけで年間150?200人が僕らの大会に参加した。そんな中でやんちゃをしていた子も確かにいます。僕の知らないところで僕らの仲間だと名乗ったり、ある時は僕自身に対して、見知らぬ人から『お前、サップ西成知ってんのか?』って喧嘩を売られたこともある。先輩から電話があって『絡まれて、今、お前の仲間だと言っているけど、来てくれるか』と言われて、行くと『お前誰や?』ってなるんですよ。(話を聞くと)当時、ミナミでたこ焼き屋をやっていたんですけど、『そこのたこ焼きを買いました』というだけ。『たこ焼き買ったら関係者か?』って怒るじゃないですか。僕らの大会のTシャツを購入して『所属や』とイキる奴もいた。勝手に言い始める子たちが増えて、それで2013年3月に格闘技大会を解散したんです」

■「今すぐ俺とサシですんのか、詫び入れるのかどっちや」

 解散からしばらくすると、サップ西成の知人から「THE OUTSIDERが大阪で興行を打つ」と耳にする。しかし、かつてサップ西成が代表を務めていた大会に出場経験のある選手は省かれて、彼らと交流のない選手らが大会に出場した。 「パーティの件もあった。こっちが活動できへんようになったら来るのか。汚い奴らやなって。僕もまだ若いんで喧嘩を売ってんのかって気持ちになってしまった」  こうして大会中に乗り込んで、プロモーターの前田氏を襲撃したのである。だが、この件にはまだ裏話がある。 「事前に某有名格闘家は前田さんと一応話をしたみたいで、『大阪でやるんだったら言うてたほうがいいよ』って。でも、僕には連絡がなかった」  当日、襲撃を受けた前田は、関係者に付き添われて控室に移動。話し合いにも応じる様子はなかったという。 「僕はリングサイドに居座って、『前田日明を呼んでこい』と。間に入ってる人間とかに。それでも出てこない。1時間ぐらい控室に閉じこもっていた。それで『俺が一人で行くんやから話をさせろ』と。某格闘家ともう一人が、『手を絶対に出すな』という条件で、何人かの立ち合いの元で対面した。僕は一人で向かって、本当いえば命かけるぐらいの気持ちでした。会議テーブルに前田さんが座ってて、周りにも何人かいました。  で、会った瞬間に机を蹴ったんです。『今すぐ俺とサシですんのか、詫び入れるのかどっちや。すぐ決めへんかったら、大会止まったまんま選手に迷惑かかるぞ』って。すると、前田さんが僕らと暴力団の関係を指摘するので、『一切、面倒も見てもらってないし、お金も払ったりもしていない』という話をしたんです。キチンと説明をすると向こうは納得したんです。それで『それやったら帰ります。みんな引き上げます。試合やってください』と言って控室を出た。録音もあります」  ところがこの会話だけで決着とはならなかった。被害届を提出されてサップ西成は逮捕という結末を迎えた。しかも、取り調べ中、被害届が丸見えで、仲が良かった後輩の名前もそこにはあったという。 「僕が逮捕されるのは、当たり前じゃないですか。こんな堂々と行きましたから。でも、いま考えるとやり方が大人気なかった。出場している選手や関係者にも迷惑かけて、今なら違う方法で接触したと思います。若かったでは許されませんけど、反省しています。出来ることなら、一度、前田さんと膝を突き合わせて話をしたい」  幼少期に複雑な家庭で育ったサップ西成は、その想いもあって約15年前から慈善活動にも励んでいる。公言しないだけで孤児院にプレゼントを持参して訪問。先日はTikTokのライブ中、突然こんなDMが届いたという。 「あの時にお菓子とか食べ物をくれたの覚えてますか?」  孤児院で出会った小5の少女は、25歳になった。本人には「一緒に施設へ行こう」とも伝えたという。禊ではないが、伝説の喧嘩師のアンディ南野が始めた北新地の防犯活動もサップ西成は手伝っている。  10年の時を経て、再びリングに帰ってきたサップ西成が、これからどんな軌跡を歩むのか。舞台は整った──。
■取材・文/加藤慶 (NEWSポストセブン)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6b819c3caefc274ef1c1ebc33b4804cb38b17c1b?page=1

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